「卵は完全栄養食」と聞いて、なぜそれほど評価されるのか気になったことはありませんか。結論からいうと、良質なたんぱく質に加え、さまざまなビタミンやミネラルを含んでいることが主な理由です。
ただし、卵だけで人に必要な栄養がすべて満たせるわけではなく、ビタミンCや食物繊維は補えません。この記事では、卵が完全栄養食と呼ばれる理由から、足りない栄養を補う食べ方まで、毎日の献立に役立つ形で解説します。
卵はなぜ完全栄養食と呼ばれるのか
卵が完全栄養食と呼ばれる理由は、たんぱく質の質と、含まれる栄養素の種類の多さにあります。「栄養が多い」という説明だけでなく、この二つを分けて理解すると、卵の強みがわかりやすくなります。
一方で、「完全」という言葉から、どんな栄養も十分にとれる食品だと考えるのは早計です。まずは、呼び名の根拠と、そこから誤解しやすい点を整理しましょう。
必須アミノ酸をバランスよく含む良質なたんぱく質
卵の大きな特徴は、体に必要な必須アミノ酸をバランスよく含むことです。必須アミノ酸とは、体内で必要な量をつくれないため、食事からとる必要があるアミノ酸を指します。
たんぱく質はアミノ酸がつながってできており、食品ごとに含まれるアミノ酸の割合が異なります。そのため、たんぱく質の多さだけでなく、必須アミノ酸がどのような割合で含まれるかも、栄養上の評価に関わります。
このバランスを評価する指標の一つが「アミノ酸スコア」で、卵は一般に100とされる食品です。ただし、これはたんぱく質の質に関する評価であり、すべての栄養素が100点という意味ではありません。
たとえば、アミノ酸スコアが高くても、その食品を少量しか食べなければ、とれるたんぱく質の量は限られます。「質がよいこと」と「必要な量を食べられていること」は、分けて考える必要があります。
卵を選ぶときは、栄養を一度に解決する特別な食品というより、日々のたんぱく質源の一つとして捉えましょう。肉や魚、大豆製品なども含めて献立を考えると、卵のよさを無理なく取り入れられます。
たんぱく質以外のビタミンやミネラルも含む
卵は、たんぱく質だけをとるための食品ではありません。脂質に加えて、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB2、ビタミンB12、葉酸など、複数のビタミンを含んでいます。
さらに、鉄や亜鉛、リンなどのミネラルも含まれています。一つの食材からさまざまな栄養素をとれる点が、完全栄養食という呼び名につながっています。
ここで注意したいのは、栄養素の「種類が多い」ことと、それぞれの「量が十分である」ことは別だという点です。名前を知っている栄養素が成分表に並んでいても、卵1個で必要量が満たせるとは限りません。
また、卵には炭水化物も含まれていますが、その量はごく少量です。五大栄養素が含まれるという説明を見ても、ごはんやパンの代わりになるほどの炭水化物がとれると考えないようにしましょう。
栄養の幅広さは卵の長所ですが、食事全体では食品ごとの役割を組み合わせることが大切です。卵に主食や野菜料理を添えることで、一つの食品に頼りすぎない献立を考えられます。
完全栄養食でも卵だけでは栄養が足りない理由
卵の栄養を正しく理解するには、含まれる成分だけでなく、含まれない成分にも目を向ける必要があります。特に押さえておきたいのが、ビタミンCと食物繊維を卵からはとれないという点です。
さらに、卵に含まれる栄養素であっても、普段食べる量だけで十分とは限りません。「不足する種類」と「不足する量」の両方を確認すると、卵だけに偏った食べ方を避けやすくなります。
ビタミンCと食物繊維は別の食品で補う
一般的な鶏卵の全卵・生では、食品成分表上のビタミンCと食物繊維はいずれも0です。卵を多く食べれば、この二つも一緒に補えるというわけではありません。
ビタミンCはコラーゲンの合成などに関わり、食物繊維はおなかの調子を整えるうえで大切な成分です。卵の栄養価が高くても、これらを含む食品を食事から抜いてよい理由にはなりません。
補う食品としては、ビタミンCを含む野菜や果物、食物繊維を含む野菜、豆類、きのこ、海藻などが考えられます。ただし、食品によって含有量が異なるため、野菜を一口添えれば不足をすべて解消できるわけではありません。
献立の例としては、卵料理にブロッコリーやパプリカを使った副菜を合わせ、食後や別の食事に果物を取り入れる方法があります。まずは「卵を食べたか」だけでなく、「野菜料理や果物を食べる機会があったか」も確認してみましょう。
毎回同じ食品で補おうとすると、買い物や調理が負担になることもあります。冷蔵庫にある野菜や季節の果物を使い、数種類の組み合わせを用意しておくと、続けやすい食べ方を見つけられます。
含まれている栄養素も1個で必要量を満たせるとは限らない
「カルシウムや鉄も入っているなら、ほかのおかずはいらない」と考えるのは誤解です。卵にはこれらの栄養素が含まれますが、含有量と自分に必要な量を比べずに、十分かどうかは判断できません。
そもそも、食事の適量は年齢、性別、身体活動量などによって異なります。同じ卵1個でも、小食の人と活動量の多い人とでは、食事全体での位置づけが違います。
不足をすべて卵の追加で埋めようとするのではなく、食品を組み合わせることが基本です。主食は主に炭水化物、主菜は主にたんぱく質、副菜はビタミンやミネラル、食物繊維をとる役割を担います。
たとえば、朝食がゆで卵だけなら、ごはんやパンと野菜料理を添える形を考えてみましょう。牛乳・乳製品や果物については、その場ですべて用意しようとせず、ほかの食事も含めて取り入れ方を考えると整理しやすくなります。
「栄養豊富な食品を一つ選ぶ」ことと、「栄養バランスのよい食事をつくる」ことは同じではありません。卵を優れた主菜の材料として活用しつつ、食卓に足りない食品群がないかを見ることが大切です。
卵1個の栄養量と卵黄・卵白の違い
卵の栄養成分を調べるときは、その数値が100g当たりなのか、1個当たりなのかを確認しましょう。食品成分表の数値をそのまま1個分だと思うと、実際より多く見積もることがあります。
また、黄身と白身は栄養成分の構成が同じではありません。ここでは、殻を除いた可食部を50gとした場合の目安と、卵黄・卵白それぞれの特徴を押さえ、表示や説明を読み違えないためのポイントを紹介します。
可食部50gならたんぱく質は約6.1g
生の全卵100g当たりの成分値から計算すると、可食部50gの卵は約71kcalです。たんぱく質は約6.1g、脂質は約5.1g、炭水化物は約0.2gとなります。
同じ条件では、ビタミンDは約1.9μg、ビタミンB12は約0.55μgです。鉄は約0.75mg、カルシウムは約23mgで、いずれも成分表の100g当たりの値を半分にして求めた目安です。
ここでいう50gは、殻を取り除いた食べる部分の重さであり、殻付きの重さではありません。また、卵は大きさが異なるため、どの卵も1個で同じ栄養量になるわけではありません。
たとえば、2個の卵を使った料理を2人で均等に分ければ、卵由来の栄養量はおおむね1人1個分として考えられます。一方、4人で分けるなら1人当たりは半個分なので、「卵料理を食べた」という事実だけでは量まで判断できません。
献立を見直す際は、細かな数値を毎回計算するより、まず実際に何個分を食べたか把握するところから始めましょう。正確な管理が必要な場合は、使った卵の可食部重量や、商品の栄養成分表示に合わせて確認してください。
卵黄と卵白では栄養の分布が異なる
卵白は水分とたんぱく質が中心で、卵黄にはたんぱく質のほか、脂質やさまざまなビタミン、ミネラルが含まれます。黄身と白身のどちらか一方だけに、卵の栄養がすべて集まっているわけではありません。
そのため、白身だけを食べた場合と、黄身も含めて食べた場合では、とれる栄養の構成が変わります。全卵の成分値を、白身だけの料理や黄身だけの料理にそのまま当てはめないようにしましょう。
栄養を幅広くとりたいという目的なら、卵黄と卵白の両方を使う料理が基本になります。ただし、食事療法などで具体的な指示がある場合は、「丸ごと食べるほうがよい」と一律に判断せず、指示に沿って調整してください。
なお、黄身の色が濃いほど栄養価が高いとは限りません。黄身の色は主に鶏の飼料によって変わり、色の濃淡と栄養価には直接的な関係がないためです。
卵を選ぶときは、見た目の印象だけで栄養の優劣を決めないことが大切です。栄養成分を強調した商品を選ぶ場合も、色や名称ではなく、具体的にどの成分がどれだけ含まれると表示されているかを確認しましょう。
卵に足りない栄養を補う食べ合わせと献立
卵を食事に取り入れるときは、「何を足せば食卓が整うか」と考えると実践しやすくなります。基本になるのは、卵料理を主菜として、ごはんやパンなどの主食と、野菜などの副菜を組み合わせることです。
毎回手の込んだ料理を用意する必要はありません。ここでは朝食と昼食・夕食に分けて、調理の負担を増やしすぎずに取り入れられる組み合わせを提案します。
朝食は卵料理に主食と野菜・果物を合わせる
朝食の組み合わせ例は、ごはん、卵焼き、野菜の小鉢です。洋食なら、トースト、ゆで卵、野菜を添えた皿を出発点にすると、何を用意するか考えやすくなります。
主食と卵料理だけに偏りやすい場合は、先に副菜を決める方法もあります。「今日は卵をどう調理するか」より先に、「添える野菜は何にするか」を決めてみてください。
たとえば、前日の夕食づくりの際に朝食用の野菜も取り分けておけば、朝の作業を減らせます。取り分けた料理は適切に冷蔵保存し、食べる前の状態確認や必要な再加熱を忘れないようにしましょう。
朝食で果物や乳製品まで用意するのが負担なら、昼食や間食など別の機会に回す考え方もあります。食事バランスは一皿の見栄えだけで判断せず、1日を通して食品群が偏っていないか確認することが大切です。
卵かけごはんが好きな場合も、それだけで献立を完成させようとせず、副菜を添える形を考えましょう。まずは普段の朝食に小鉢を一つ加えるなど、続けられる変更から始めるのがおすすめです。
昼食・夕食は具材を増やして一品料理の偏りを防ぐ
昼食や夕食では、卵と野菜を一緒に調理する方法が便利です。たとえば、きのこと野菜を加えたオムレツにごはんを添えれば、複数の食材を一つの献立に取り入れられます。
うどんや丼ものを選ぶ日は、卵だけを足して終わりにしないことがポイントです。野菜の小鉢を添える、汁物に野菜やきのこを使うなど、主食と主菜以外の部分も意識してみましょう。
ただし、料理名に「野菜入り」と付いていても、実際の野菜の量が十分とは限りません。少量の彩りなのか、しっかり食べられる量があるのかを見て、足りないと感じたら副菜を追加する形がわかりやすいでしょう。
また、卵を便利な食材として使いつつ、魚、肉、大豆製品を主菜にする日も設けてください。主菜になる食品には複数の選択肢があるため、いつも卵だけに固定する必要はありません。
買い物では「卵と一緒に何を食べるか」まで決めておくと、献立を組み立てやすくなります。卵料理を増やすことだけを目標にせず、野菜や主食も含めた食事の形を整えることを目指しましょう。
卵を毎日の食事に取り入れるときの注意点
栄養価が高い食品でも、多く食べるほどよいとは限りません。卵の量を考えるときは、ほかの食事内容に加え、健康状態や食事療法の有無も確認する必要があります。
また、栄養面と同じくらい大切なのが、保存や調理の衛生管理です。「何個食べるか」と「どのように扱うか」を分けて考え、無理なく安全に取り入れるための基本を押さえておきましょう。
食べる個数は食事全体と健康状態で考える
「卵は1日何個までか」という疑問に対し、すべての人に共通する個数だけで答えるのは適切ではありません。食事の適量は人によって異なり、卵以外からとるたんぱく質や脂質も含めて考える必要があります。
献立を考える出発点としては、卵1個を使った料理を主菜の一部として捉える方法があります。これは1日の上限を示すものではなく、肉や魚、大豆料理も含めた量を把握するための考え方です。
また、コレステロールについて「卵なら気にせず何個でも食べてよい」と考えるのは避けましょう。高LDLコレステロール血症の人では、食事からのコレステロールを1日200mg未満に抑えることが推奨されており、卵の量も個別に調整する必要があります。
健診で脂質の異常を指摘された人や、食事療法を受けている人は、医師や管理栄養士に相談してください。その際は卵の個数だけでなく、普段の肉料理、乳製品、間食なども伝えると、食事全体を検討しやすくなります。
卵アレルギーがある場合も、栄養価の高さを理由に自己判断で食べてはいけません。食べられる量や加熱条件は個人差があるため、医師の指示に従うことが大切です。
生食・加熱の選び方と冷蔵保存を押さえる
卵の栄養を活用するために、生で食べることにこだわる必要はありません。ゆで卵や卵焼きなども選択肢にし、食べる場面や衛生面に合わせて調理方法を決めましょう。
日本で生食用として販売されている卵の賞味期限は、表示された保存方法を守ったうえで、生で食べられる期限を示しています。購入後は冷蔵庫で保管し、生で食べる場合は生食用であることと期限を確認してください。
卵を割った後はそのまま長く置かず、調理や飲食に使う直前に割るようにしましょう。生卵や半熟卵を含む料理を室温で長時間放置しないことも、食中毒を防ぐために重要です。
お弁当に入れる卵焼きやゆで卵は、半熟ではなく、完全に固まるまでしっかり加熱してください。卵を触った後の手洗い、器具の衛生管理、調理後の保管にも気を配る必要があります。
卵が完全栄養食と呼ばれるのは、良質なたんぱく質と幅広い栄養成分を含むためであり、卵だけで食生活が完成するからではありません。主食や野菜、果物などと組み合わせ、安全に扱うことまで含めて、毎日の食事に役立てましょう。
よくある質問
卵は完全栄養食なのに、なぜ卵だけでは生活できないのですか?
完全栄養食という呼び名は、良質なたんぱく質と幅広い栄養成分を含む特徴を表していますが、必要な栄養をすべて十分にとれるという意味ではありません。卵にはビタミンCと食物繊維が含まれず、炭水化物もごく少量です。
また、含まれる栄養素についても、食べる量によって摂取量は変わります。卵だけを増やして不足を埋めようとせず、主食、野菜料理、果物、乳製品などを組み合わせて食事全体を整えることが大切です。
卵1個にはどのくらいのたんぱく質がありますか?
殻を除いた可食部を50gとすると、生の全卵1個に含まれるたんぱく質は約6.1gです。同じ条件でエネルギーは約71kcal、脂質は約5.1gとなります。
これは食品成分表の100g当たりの数値から計算した目安で、実際には卵の大きさによって変わります。殻付きの重量と可食部の重量を混同しないことが大切です。
また、卵料理を数人で分ける場合は、使った個数ではなく、自分が何個分を食べたかで考えると把握しやすくなります。
卵に足りない栄養を補うには、何と食べればよいですか?
基本は、卵料理に主食と副菜を組み合わせることです。ごはんやパンで主に炭水化物をとり、野菜やきのこ、海藻などを使った副菜で、卵だけではとれない食物繊維などを補います。
ビタミンCを含む野菜や果物も取り入れましょう。献立例としては、ごはん、卵焼き、野菜の小鉢を合わせ、別の食事で果物を食べる方法があります。
一つの組み合わせですべてを満たそうとせず、1日全体で食品の種類や量に偏りがないかを見ることが大切です。
栄養をとるなら、生卵とゆで卵のどちらがよいですか?
栄養をとるために、生卵だけを選ぶ必要はありません。生卵かゆで卵かだけで優劣を決めるより、食べやすさ、献立の組み合わせ、衛生面を考えて選びましょう。
生食する場合は、生食用の卵を表示どおりに保存し、賞味期限内に食べることが前提です。割った後の長時間放置も避けてください。
一方、お弁当に入れるゆで卵や卵焼きは、半熟ではなく完全に固まるまで加熱することが大切です。調理方法にこだわる前に、安全に食べられる扱い方を優先しましょう。
卵は毎日食べてもよいですか?
卵を毎日の献立に取り入れる場合も、全員に同じ個数が適しているわけではありません。肉、魚、大豆製品などの主菜と合わせて、食事全体の量や偏りを考えましょう。
特に高LDLコレステロール血症の人は、食事からのコレステロール摂取に注意が必要です。健診で異常を指摘された人や治療中の人は、医師や管理栄養士に普段の食事を伝え、量を相談してください。
卵アレルギーがある場合も、加熱すれば大丈夫と自己判断せず、医師の指示に従ってください。
